第二次世界大戦の終戦直後、アメリカの片田舎、
少年が聞いていたラジオ放送に突然割り込んできた、声。
その声はその時から、少年と対話をするようになる、
その声を少年は゛天使゛と呼んだ。
でも、暫く対話を重ねると、どうやら一人じゃ無いらしかった……
それは、或る片田舎から始まった。
またたく間に30年程の後、
十歳を迎えるエディ少年は、我が家の納屋でとても興味を引くものを発見した。
子供には一抱えもある箱形の物体。
ホントに納屋の奥の奥に、長年形を潜めていたようですっかりホコリにまみれた姿を晒していた。
それは、片田舎で平凡に暮らす少年の好奇心を大いに刺激するのには十分で、一見黒塗のジュークボックス風だがもっとメカニカルで、まるでジュール・ベルヌのSF小説に登場する未知のデバイスを想像させた。
彼はこの箱を何とか取り出そうとあれこれ努力したけれども、非力な少年には何ともならず、やがて一抱えもあるとても重い物体の扱いにすっかり困惑した。
その後も諦めきれず、何度も頭を傾けたり腕組みをしたりして小一時間、思案した結果とうとう一つアイデアが思い浮かんだ、それは細やかだが彼にはグッドアイデアに思えた。
エディは決心する時は、何故か目玉をくるりと一回転してからコクッと頷くクセがあって、この時も彼はそれをして行動に出た。
彼には大人の親友がいる、つまりエディのアイデアとは、その屈強な大男に頼み込んで重い箱を納屋から運び出して貰う事だった。
因みにその親友とは名前をサイモンと言うネイティブアメリカンで、物心ついて以来父が不在のエディには、頼りがいがあって大らかな彼は兄や父の様な存在であり、子供の気持ちも理解してくれるとっても大切な存在だった。
エディは元々彼等の歴史や習慣・考え方に関心があって、サイモンとは写真で見て憧れ訪れた大渓谷で出会ったし、何度か通った後にそこがネイティブアメリカンの間で"聖地"と呼ばれていると教えてくれたのも彼だった。
それ以来、好奇心旺盛で正義感の強いなエディと、慎重で情に篤いサイモンは意外とウマが合ったのか、年齢差を乗り越えて親友となった。
さて、その後その箱がサイモンによって何とか納屋の外に出された頃には、その日の昼過ぎになっていた。
サイモンは運び出してからやっとこさ、圧し殺していた頭の中の疑問を吐き出した、
「何だい?コレは」
「まだ判んないんだ」
エディの能天気な返事に鼻息を吐いたものの、気の良いサイモンは彼の好奇心に付き合うことにした。
「かなり年代物だな、俺の年齢より古そうだ」
出してみてやっと全体像が見れるようになったものの、エディには理解出来なかったが怪訝そうな顔でサイモン続ける、
「古そうだ、電源入れたら発熱したり、爆発するんじゃ」
「サイモン怖いのーー大丈夫だよ」
「俺はエディが怪我でもしないかと心配なんだ」
「ありがとう、でもこれ何だろう」
例えて言えばテレビジョンの様な、ブラウン管やメーター、レバーやボタンが幾つか付いている。
「ラジオかな」
「こんな変ちくりんなラジオ見たことがないけど」
「何だってイイや、とにかく気に入ったんだ」
見るからに小難しそうな黒い箱がエディの好奇心と感性をくすぐるのだ、何の装置かは後でゆっくり考えればいいと彼は大事な事を後回しにした。
「僕のコレクションにしよう」
と、ごり押しして気の進まなそうなサイモンに、
「それよりこのままじゃママに見つかって捨てられちゃうよ」
エディは、母が帰る前に一刻も早く隠そうと思ってサイモンに何度も拝み倒した。
「うーん」
と散々葛藤していたもののエディにはどうも甘い彼は結局折れて、二人はエディの部屋まで運ぶため家の中へ入っていった。